日本茶と焙じ茶

日本のお茶の中でも意外と知られていない焙じ茶について、
つくりかたから楽しみかたまで、お伝えしていきます。

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焙じ茶とは。

ご存知のように、焙じ茶は日本茶の一種です。しかし、それが煎茶や番茶からつくられていることは、あまり知られていないのではないでしょうか。焙じ茶の「焙」の字は、「焙煎」の「焙」。煎茶や番茶を強火で焙煎し、芳ばしい香りとこっくりとした味わいを出したお茶を、焙じ茶と呼ぶのです。香りと味わいのほか、焙煎の高い熱による昇華でカフェインが少なくなる傾向があるため、煎茶に比べて優しく感じられるのも特徴です。

日本ならではの煎茶。
お茶の世界を広げる焙じ茶。

焙じ茶の原料である日本の煎茶や番茶、また外国の紅茶や烏龍茶などのお茶も、元をたどれば「チャの樹」という同じ種類の樹からできています。原産地は、中国西南部。雲南省の山岳部と推定されていて、その辺りには高さ20mに及ぶ巨大なチャの樹があるそうです。日本の茶畑の、かまぼこ型に剪定されたチャの樹が並ぶ風景からは、想像がつかないですね。実は、かまぼこ型のチャの樹は、摘み取るチャの量が多くなるように、また霜などの被害を受けにくいように、日本で独自に考案されたもの。外国で栽培されているチャの樹は、それぞれの気候とその後の加工法に従って、別の姿をしていることも多いようです。

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かまぼこ型のチャの樹がどこまでも続く日本の茶園。

こうして育てられたチャは、その後、蒸して煎茶などへ、発酵させ紅茶などへ加工されます。煎茶は、日本独自のお茶として海外でも認められつつあります。その煎茶を原料とする焙じ茶も、もちろん日本ならではのお茶です。しかし、最近では必ずしも煎茶を原料としない焙じ茶も登場しています。焙じ茶は、さまざまな原料を焙煎することでお茶の世界を広げていくお茶と言えるのかもしれません。

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どんなお茶でも、焙煎することで「焙じ茶」になるといえます。

焙じ茶のなりたちと、今。

緑茶をつくる過程で出る下級の煎茶や、二番茶、三番茶。それを、よりおいしく飲むために強火で焙じて生まれたのが、焙じ茶でした。そのため、焙じ茶は長い間ふだん使いのお茶として定着していました。「番茶=焙じ茶」と思われるかたも多いのですが、本来「番茶」は一般的な煎茶の収穫時期より遅い時期に摘まれた煎茶を指す言葉。どちらも一般家庭で安価に、手軽に飲めるものだったため、焙じ茶と番茶が混同されやすい背景があったようです。

そんな、家庭で手軽に飲むお茶だった焙じ茶ですが、近年ではそのイメージもだいぶ変化してきました。由緒ある料亭が、料理に合わせこだわりの焙じ茶を提供することも、珍しいことではなくなりました。大手のコーヒーショップなどで、焙じ茶の芳ばしい香りをいかした飲み物が販売されているのも、よく目にする光景です。

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丸八製茶場のお店で楽しめる「焙じ茶ラテ」も、人気メニューです。

焙じ茶として
味と原料にこだわる時代へ。

焙じ茶に注目が集まるにつれ、その原料へのこだわりも、当たり前になってきています。最近では、大手メーカーから発売されているペットボトルの焙じ茶にも一番茶が使われるようになり、焙じ茶といえば下級の煎茶を焙煎したものという時代は、過去になりつつあります。

製茶の世界では、おいしさの追求のため、原料へのこだわりが進んでいます。一番茶を使うだけではなく、チャの樹の使う部位の検討や、合組(ごうぐみ)と呼ばれるブレンド、さらには焙煎の仕方など、新しいチャレンジが続けられるなか、一言で焙じ茶といっても多種多様なものがみられるようになりました。

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チャを蒸したものと、釜炒りしたものを、それぞれ焙じ茶に仕立てたもの。品種や製法が変わると、形だけでなく味わいも驚くほど変わります。

まだまだ進化していく焙じ茶の世界に、これからも注目してください。