鹿児島県産「おくみどり」 茶園訪問レポート
鹿児島県産「おくみどり」 茶園訪問レポート
初夏にぴったりの爽やかさ。冷茶でたのしむ黄金色のほうじ茶「初夏焙茶(しょかほうじちゃ)」。香りに特徴のある品種を中心に、厳選した原料を使用しています。
中でもキーポイントとなる品種は、鹿児島県霧島市産の「おくみどり」。生産家の福満淳一さんを訪ね、摘み取りの様子を見学させていただきました。
2016年5月4日、快晴。
前日の雨が残る畑。摘採の前に、ブロワー(風の出る機械)で水分を飛ばします。さらに数人で畝の間を歩き、摘採時に混ざらないよう、木の葉や枝などを取り除きます。
乗用型の摘採機で摘採します。畝に沿って移動しながら、茶葉を刈り取ります。1列進んだら向きを変えて次の列を刈りながら戻ってきます。
新茶をいれてひとやすみ。手作りの郷土菓子あくまきをお供に…
刈り取った茶葉はコンテナへ積み込み。600kgほどの生葉でコンテナいっぱいになります。最後は皆で荷台に上がって均しながら。
光をうけて明るく輝く茶葉の美しいこと。大事に扱っておいしいお茶に仕上げなくては。
コンテナの中には風が送られ、温度の上昇をおさえます。摘み取られた生葉は放っておくと発酵が進みます。これから40分の道のりを揺られて工場まで…
通常の日本茶製造工程では、摘採後すぐに工場へ運び、蒸すことで発酵を止めるのですが、福満さんのおくみどり茶園の場合、どうしても工場まで距離があり、時間がかかってしまいます。
さらにこの茶園では、管理の都合上、まず新芽を摘み、2~3日経ってから遅れ芽を刈る「二段刈り(※)」という摘採方法をとらざるを得ません。
このような状況のなか、福満さん自身も味に自信の持てなかったこの「おくみどり」。
意外なことに、新芽の方ではなく、後から摘まれた遅れ芽「二段刈り下」の部分が、焙じてみると他にはない独特の香気が感じられることが分かり、それからはほうじ茶の原料となることを想定するようになりました。
摘採から蒸し工程に入るまでの約1時間という時間、新芽を摘んでしばらく経ってから摘まれた遅れ芽。煎茶では鮮度や品質が落ちると考えられるような条件ですが、焙じてみると不思議と個性的な風味が生まれるのが、この「福満おくみどり」なのです。
※二段刈り…茶畑を均すために、一番茶を摘んでから少し期間をおいた後に遅れ芽を刈ること。遅れ芽を放置しておくと二番茶の芽の成長を妨げたり、成長し硬くなった遅れ芽が二番茶に混ざると品質も落ちるため。